構造改革のための25のプログラム
第三節 国家予算の半減
プログラム十八
5年で予算規模を二分の一に縮小する

 第一章で詳しく見たように、わが国には公的な借金が一〇六六兆円ある。借金は国の分だけでも毎年四〇兆円以上増え続けている。国の借金に対する国民負担は利息だけでも軽く一日四〇〇億円を越えている。わが国は毎年毎年、元利返済金額より新たな借金額の方が大きいという”サラ金地獄”に陥っているのだ。
 この事態への対応策として政府がとってきたのは、さらなる行政主導の投資政策だが、こうした官制経済の拡大は悪夢が悪夢を呼ぶ結果をもたらすに過ぎない。
 小泉首相は平成一四年度予算で新規国債の発行を三〇兆円以内にすると公約しているが、この程度の方針では悪夢から脱出する展望は生まれない。
 わが国の国家予算の規模は一般に信じられている八五兆円(平成一二年度)ではなく、実際には財政運営の主体となっている特別会計を軸とした二六〇兆円である。税収(四七兆円)に照らして、国の予算がこのように異常な規模になった大きな要因は、郵貯(総額二五五兆円)、年金積立金(総額一四〇兆円)、簡保(総額一一〇兆円)などから特別会計で借金をし、事業予算に充てる仕組みだ。
 もちろん、これ以外に国債の乱発もある。平成十三年度予算でみて、二五〇兆円の歳出(純計)のうち補助金は、一般会計で二二.一兆円、特別会計で三一.九兆円の合計五四兆円が計上されている。このうち、地方交付税交付金(一部公共事業関係費も含む)と特殊法人等へ支払われるもの、および福祉・教育関係を除いたもの、すなわち公共事業関係と企業、業界等の経済関係のものは、合わせて三〇兆円を超えている。また、公共事業費は(相当部分は補助金と重複するが)約三〇兆円あり、これに公共事業人件費、公共事業借金(建設国債等)負担などを含めると公共事業費と補助金総体の予算額はさらに数十兆円増える。
 こうした実体からすれば、公共事業費と行政企業を含めた補助金の総額のうち、五年間かかって、年間予算を三〇兆円削減することは決して困難ではない。
 さらに、向こう五年間で二六〇兆円の歳出すべてを抜本的に見直し、中央政府の予算規模をせめてドイツ、フランスの五倍、アメリカ(連邦政府)とほぼ同じ一九〇兆円程度に縮小することが必要である。つまり、会計全体の整理・簡素化と合わせて、歳入・歳出を一〇〇兆円縮小する。これをどう達成するか。
 さて、おおかたの読者は、国家予算を一〇〇兆円も減らすなど、空想的で非現実的な話だと思われるかもしれない。しかし、そんなことはないのだ。歳出を大幅に圧縮する鍵は、一般会計(八五兆円)から五一.六兆円を受け入れ、総額三三六.七兆円(歳入)にも膨れ上がっている特別会計にある。差し当たり大幅に整理・縮小できる予算事項と歳出は、次のようなものである。

▽まず地方交付税特別会計である。地方交付税交付金は、一般会計から交付税特会を通して地方公共団体に支払われる。一般会計から交付税特会に入るのは約一七兆円なのに、地方へは約二〇兆円が渡されている。約四兆円もの差が生まれているのは、竹下登首相時代に創設された地方単独の公共事業への交付補助(最大五五%)や、公共事業の地方起債分への裏補助など、一般会計から出せないものがあるので、特会を用いて、このような姿になったのであろう。

 その約四兆円は、交付税特会が資金運用部(現・財政融資資金)から借り入れている。借りても返せないから、利息も含めて毎年、上積みで借り替えを行う。返済財源のない借金である。その結果、平成十三年度の借り換え額は四二.五兆円に達した。四二.五兆円を借り入れて三八.八兆円を返済する。その返済は、国債整理基金特会を通して資金運用部へ渡る。複雑怪奇、奇妙奇天烈だ。
 この四二.五兆円は、第一章に示した国の借金(「借入金」)に計上されている。このような不明朗な特別会計は廃止し、地方交付金は一般会計が直接処理すべきである。地方単独事業への補助交付や地方起債への裏補助も見直すことで歳出の削減ができる。すなわち、国の予算上の歳出(特別会計)四二.五兆円と歳入三八.八兆円(実債約四兆円)は整理・削減することができる。

▽特別会計の中の「財政融資資金への繰り入れ」(約四四兆円)は、特殊法人を廃止することによって、ほぼ不要となる。平成十三年度予算で見ると、財政融資資金特別会計が財投債の形で調達する約四三兆円がそのまま財政融資資金に繰り入れられる。したがって、財投制度の抜本的見直しと特殊法人等の廃止によって、四三兆円は次第に縮小し、ゼロに近づけることができる。これは、まさに、郵貯や年金という国民の資産から借金して国の予算に充てる不正常な歳入・歳出であるから廃止することが重要である。

▽郵便貯金(一一.五兆円)、郵便事業(七.五兆円)の両特別会計は、平成十五年の郵政公社化とともに廃止されるのが当然であろう。

▽特別会計のうち、道路整備(四.五兆円)、港湾整備(四五八八億円)、空港整備(四八〇〇億円)、治水(一.五兆円)、土地改良(五五〇〇億円)など公共事業関係の支出も一般会計に移行し、原則として税収の範囲内で管理することになれば、相等規模の歳出削減が可能となる。


▽平成一三年度予算における特殊法人・認可法人への政府予算支出は、一般会計から四兆円、特別会計から三.五兆円、計七兆五〇〇〇億円である。これは早晩セロにしなければならない。

 以上、大どころだけをざっとあげてみたが、さらに特別会計全般や施設費や省庁予算の中には山ほど無駄な事項・分類が含まれている。