構造改革のための25のプログラム
第二節 権力の市場からの退却
プログラム十五
新しい民間の公共事業勃興策を打ち出す

 現在、公共事業を請け負う全国の土木建設関係企業は約六〇万社、そこに働く職員は約七〇〇万人といわれている。公共事業の廃止によって職を失う、これら従業員に対しては、まったく新しい社会資本形成の構想に着手することによって職場を提供しなければならない。
 インターネット、情報化時代に対応し、また、高齢化社会に対応し、さらには、自然環境の重視と人間性豊かな心の文化を築く社会資本の構想を地方で展開することが必要である。
 具体的には、教育施設の地方移転推進や医療・福祉施設の大々的整備、情報産業の地方への誘導、セカンドハウス建設運動、インターネットを通じた自家菜園の供給など、地方を舞台とした新しい営みを、資金面でというより制度面から大胆にバックアップするのである。
 税制でいえば、こうした事業に対して不動産取得税や固定資産税の一〇年間無税化をはじめ、長期休暇制や労働時間短縮など雇用労働政策とも連動した可能な限りの奨励策を打ち出すべきだ。
 その際、こうした施策が地方政府の負担とならないようにするだけでなく、地方にとって、より大きなメリットを生むための措置を講じたい。
 また地方自治体を中心に、不要な”公共事業”施設の撤去と自然回復のための生活事業の展開などを推進すべきである。
 こうした事業は社会政策的経費として多少の予算がかかったとしても、従来の公共事業や農業予算の無駄に比べれば未来の豊かさにつながる。
 国民に犠牲を強いる「公共事業」に替わるものは、中間搾取なしに地域経済を活性化させる住民自身の自立した自由な営みを促進する「生活事業」である。
 その一つは、地域下水道事業だ。従来のように毎年四兆円も使っていながら、さっぱり普及しない利権型の「広域下水道」でなく、地方自治体に財政自主権を賦与した上で、合併浄化槽やコミュニティプラント方式などを組み合わせた地域生活型で推進すれば、急速に整備が進み、地域の活性化にも結びつく。
 文教・福祉・医療施設や生活道路の建設にあたっても、地域計画・実施・費用などすべての面で民間パブリック密着型に改めるなら、「早く安く多く」が実現し、地域経済に寄与するだろう。