構造改革のための25のプログラム
第一節 官企業の全廃がもたらす経済の覚醒
プログラム二
すべての特殊法人廃止を急ぐ

 特殊法人は廃止すべきである。この場合、特殊法人という組織のあり方の問題と、それぞれの特殊法人・認可法人が行っている事業内容の問題がある。存在のあり方、すなわち、特殊法人という組織形態は無条件に廃止しなければならない。その理由は第二章で述べたように、わが国の法体系に矛盾する不当な存在だからである。事業内容については、特殊法人・認可法人は主として民間が行うべき活動を行っているので、この観点からも原則的に廃止しなければならない。
 ただし、廃止の時期、方法などは、それぞれの特殊法人がかかえている借金の整理、特恵的な法制、税制、政策との関係で異なってくる。
 また、各特殊法人とも多数の”事業”に進出しているが、それらの”事業”のなかには基礎科学研究分野などで優れた人材を有しているものもある。このような、経済活動以外の分野での人材や技術は大学などに吸収する手立てが必要であろう。逆に、福祉や教育、環境など、耳あたりよい領域に進出して融資事業を行っている特殊法人もあるが、これらの仕事は直接国が予算をつけるべきものか、または民間がやるべきものか、どちらかであるから、一律に廃止すればよい。
 特殊法人改革を進めるにあたっての基本原則は次の二つである。

一、経済活動に属する事業・組織はすべて廃止すること。
小泉首相の言う「民間にできることは民間に」は間違っている。このようなことをいっていては、またしても、(政府系金融機関が実施している)長期固定低金利の大量資金融資などは「制度上民間にはできない」ということになり、存続されてしまう。必要なのは福祉、教育、医療、治安、防衛といった行政の事務以外は「すべて民間がやるべき」と宣明することである。特殊法人などが行っているさまざまな事業のうち、経済分野のものは自然と市場の論理で民間に吸収されるであろうし、行政が担うべきものは国と地方の行政機関が予算の許す範囲でやればよい。

二、特殊法人の民営化(株式会社化)は原則として行うべきではない。
 国の金と権力で巨大化し経済を浸蝕した独占企業を民営化することは、決して経済全体にとって好ましいことではないばかりか、政治・行政のモラルを踏みはずす。そもそも彼らは政府による法的、政策的、財政的後ろ盾があって、はじめて存在できる組織であるから、民間の水にはなじまない。民営化があり得るのは、基幹的社会資本整備部内で類似のものが民間にない企業体だけであろう。NTT、JRが民営化された今日、残るのは道路関係の公団ぐらいしかない。